酒蔵の歴史や、お酒に対する思い入れを知れば日本酒がさらに美味しく感じられるはず!
今回は、新潟の酒蔵「加茂錦酒造」と同社の代表的な日本酒「荷札酒」の魅力をご紹介します。
伝統あるイノベーター「加茂錦」とは?
加茂錦酒造を「伝統あるイノベーター」と賞賛したのはなぜ?もちろん、それには理由があります。
創業は1893年(明治26年)。新潟の県の中央に位置する、加茂市に加茂錦酒造があります。
加茂市は市内に由緒ある神社仏閣が点在し、歴史的な建築に雄大な自然が織りなす景観から北越の小京都と呼ばれるほど。
東西に細長く広がる土地のその多くは山林です。東は最高峰粟ヶ岳を筆頭に山々が高くそびえ、豊かな水源の加茂川が市内を縦貫して二分し、扇状地を形づくっています。
豊かな水、美しい空気、そして米どころと言われる新潟に、創業から120余年の酒造所となれば、この地でも有数の、伝統ある老舗と言ってよいでしょう。
そんな歴史ある酒造所でありながら、イノベーター(革新者)を冠するのは、同所が常に「日本酒のありかた」を模索し続けてきたからなのです。
日本酒と言えば和食。日本人の生活に、食卓に日本酒は根付いて来ました。それがグローバル化とともに徐々に変わり始めます。戦後の日本の変化はその速さと言い規模と言い、すさまじいものでした。
和食の変化なのか、それとも日本人の食生活の変化なのか――食生活の欧米化は酒を例外にしてくれはしなかったのです。
イノベーターとしての矜持(きょうじ)、とにかく食事に合う日本酒を目指して
自社ホームページは次のようにあります。
『そんな多様化した食生活の中で、どのようなお酒がおいしく飲めるのか、 私たちは日々研鑽を重ねています。』 出典:加茂錦酒造ウェブサイト
決して大きいとは言えない酒造所ですが、こうした古きにとらわれない革新的な考え方こそが、120余年の時を経ても今も愛される醸造所である所以なのかも知れません。
酒造りを自己満足では終わらせず、飲んでくれる誰かがおいしいと感じてくれる事だけを喜びとしているのです。
加茂錦の日本酒新ブランド「荷札酒」とは?
「荷札酒」は、2015酒造年度から加茂錦と双頭となるべく誕生した「加茂錦酒造」の日本酒ブランドです。全国の日本酒専門の特約店に販売しています。
このブランディング、実は若き蔵元後継者である田中悠一氏が手掛けたもの。伝統ある「加茂錦」があるからこその斬新で革新的なブランディングは、昨今の日本酒ブームにのり、注目を浴びるようになります。
荷札酒はすべて、純米大吟醸酒の生酒や生詰め酒。特約店販売のみのため蔵での直売は行わず、同酒造のネットからの通信販売もしていません。それだけに特別感が際立つというもの。
さらに酒のスペックや、、精米率や使用米、酵母番号などのデータを、一枚の荷札に記載し出荷。これもまた、伝統的な日本酒ラベルとは一線を画して人気を集めました。
華麗なるプロモート戦略
「加茂錦酒造」の転換期は2000年代。2008(平成20)年に、製造部門を新潟市秋葉区に移転し、若き蔵人が集り新たな酒造りがスタートしたことに始まります。
これをきっかけに創業からの「加茂錦」ロゴマークを一新。デザイナーに頼んで斬新なものに変更しました。
さらに新ブランド「荷札酒」を立ち上げ、宣伝を行いました。
それも、大々的な宣伝広告ではなく、通好みに訴求する方法。口コミにも近い『知る人ぞ知る』というバックグラウンドを匂わせるマーケティング戦略。
これは意図的でなかったとしても、新たなブランドには大きな後押しになりました。日本酒愛好家がなんとしても一度は飲みたい日本酒として注目したからです。
販売戦略も練られていると言っていいでしょう。荷札酒をネット販売にしなかったことが功を奏します。もともと、大酒造所ではないため、生産量は限られる。
だからこそ、販売は日本酒専門の特約店に限定する→日本酒専門書や日本酒専門サイトでその酒の面白さを大きく取り扱ってくれる→それを読んだ日本酒愛好家が同酒を置いている酒屋を目指す・・・・・・とすべてがウィンウィンの関係で終わるように”良い流れ”が生まれたのです。
日本酒ブームに乗り遅れない!
もちろん、世界的に盛り上がっている日本酒ブームにも乗り遅れないように手を打っています。
ウェブサイトはすべて日英併記。これは、訪日外国人が日本酒を楽しむ道しるべにもなるうえ、世界を相手に市場展開しているに等しいと言えます。
日本酒そのものの改良にとどまらず、売り方にも目を配っているといえますね。
米と麹と水、さらに仕込みタンクと、その組み合わせの違いによって酒の香りや味にどのような違いが生まれるのか?実験的な要素までもが楽しい個性豊かな荷札酒、最新の情報は同酒造のサイトに掲載されています。ぜひチェックしてください!