カクテルやお菓子にも用いられるなど、意外と身近なお酒「リキュール」。しかし意外にも、リキュールが何なのかを知っている人は少ないものです。
ビールやワイン、日本酒と違って定義がそれぞれの国で異なるのも曖昧な理由の一つになります。そこで今回はリキュールとは何なのか、カクテル意外のおすすめの飲み方などについて詳しく紹介していきたいと思います。
リキュールとは
リキュールとは、蒸留酒にハーブ・フルーツ・ナッツ等を溶かし込み、お砂糖やシロップを加えることによってできるお酒です。
元々は中世ヨーロッパで飲まれていた、薬草や香草を浸して作られていた薬酒。15世紀に大航海時代が始まると、香辛料や砂糖等が輸入されるようになり、甘いリキュールが作られるようになり、薬酒としてだけではなく嗜好品として広く飲まれるように変化していったのだそう。
その後、産業革命が起きて連続式蒸留器が発明されると、高濃度のアルコールも作られるようになり、より今のリキュールに近いものになったと言われています。
ハーブやフルーツ、ナッツの香りと味がお酒にしっかりと移っていることから、そのまま飲んだりカクテルづくりに使う以外に、お菓子作りや料理にも使われるなど幅広い用途に用いられるのが特徴。分類としては混成酒に分類されますが、リキュールはその中でもスピリッツがベースのものだけのことを指します。ビールやワインがベースの混成酒もありますが、これらはそれぞれビールやワインに分類されるため、リキュールにはあたりません。
国によって異なるリキュールの定義
意外なことに、リキュールの定義は国や地域によって異なります。以下では、国や地域ごとの定義とその条件を紹介していきたいと思います。
日本
日本において、リキュールは「酒類と糖類その他の物品(酒類を含む)を原料とした酒類でエキス分が2度以上のもの(清酒、合成焼酎、しょうちゅう、みりん、ビール、果実酒類、ウイスキー類、発泡酒、粉末酒を除く)」と定義されています。エキス分というのはリキュールに含まれる糖分の量のことを指しており、それさえ満たしてしまえば、製造方法や原材料に規制はありません。そのため、他の国と比較してかなり自由な定義だといえるでしょう。
しかしながら、実は「第3のビール」と呼ばれている商品のほとんどはリキュールに分類されるのです。これは、第3のビールが麦芽を使用していないため。ビールというのは麦芽使用料が25%以上のもののことを指し、発泡酒は25%未満のことを指します
そのためビールのような味わいではありますが、発泡性リキュールに分類されるのです。
アメリカ
アメリカでのリキュールの定義は「アルコール・ブランデー・ジンを始めその他のスピリッツを使い、副材料として果実やハーブ、生薬などの天然のフレーバーを加えて製造されたものの中で、砂糖を2.5%以上含むもの」とされています。
特に製造に関する規定はありませんが、国産にはコーディアル、合成フレーバーにはアーティフィシャルの表示の必要があります。これによって国産の天然フレーバーか否かを一目で見分けることができるのです。
ヨーロッパ
ヨーロッパ諸国におけるリキュールの定義は「糖分が1Lあたり100g以上含まれているアルコール飲料」とされています。その中でも糖分が1Lあたり250g以上になると、クレーム・ド・○○を名乗れるようになるのだそう。
しかし、カシスを使ったリキュール、「クレーム・ド・カシス」だけは1Lあたり400g以上でなければ名乗ることができません。クレーム・ド・カシスは特にフランスで好まれており、果実系リキュールの中でも需要はかなり高いことが理由として考えられます。
ヨーロッパ諸国の中でも特にフランスはリキュールに関して細かく定義されており、「果実やハーブなどの副材料をアルコール中に煎じて、浸透あるいはその液体を蒸留させたもの、またはそれぞれを調合した液体であり、砂糖などの甘味を加えられ、且つアルコール分が15%以上のもの」となっています。
糖分の量だけではなく、副材料やアルコール度数に関しても定義されているんですね。
リキュール製造方法
リキュールの製造方法は香味抽出・ブレンド・熟成・濾過という過程を経て作られます。特に、香味抽出という過程が重要で、4種類の抽出方法があります。
以下では、蒸留法・浸漬法・パーコレーション法・エッセンス法、それぞれの香味抽出の方法の特徴をまとめて紹介していきます。
蒸留法
「蒸留法」は単式蒸留器を使う方法で、香味原料とスピリッツもしくは水を単式蒸留器で蒸留します。これにより香味成分だけを残し、澄んだ色の液体ができあがります。そのため、高級なリキュールは蒸留法で生成されることが多いです。
この製法のデメリットは、果物のように加熱で変質してしまうものには使えないこと。変質してしまうと繊細な香りと色、味を残すことができず、上質なリキュールが作れないのです。逆に、種子・ナッツ系や果皮系では存分にその風味を生かすことができる方法として活用されます。
浸漬法
「浸漬法」は、最も古くから使われていた蒸留を伴わない手法。冷浸法と温浸法があり、それぞれ甘味料や着色料を加えることもあります。
冷浸法は、スピリッツに香味原料をそのまま漬け込んでしまう、一般家庭でも簡単にできる方法です。漬け込む期間は原料と環境によって異なりますが、数日から数ヶ月漬け込んで抽出されます。果肉が柔らかいベリー系のものは、冷漬法を用いることが多いようです。
一方、温浸法はお湯に香味原料を漬け、冷えた後にスピリッツを加えて抽出を行う方法。ハーブ系の香味原料を使用する際に向いている方法です。
エッセンス法
「エッセンス法」は、事前に抽出しておいた香味原料のエッセンスオイルをスピリッツに加えて香りづけをする方法。単独で用いられることはあまりなく、蒸留法や浸漬法と併用されることが多いです。
香りを加えるだけではなく風味を加える目的で使用されることもあります。
パーコレーション法
「パーコレーション法」スピリッツや水に香味原料を加えて、循環させることによって成分を抽出する方法です。コーヒーのパーコレーターと同じ仕組みになります。
二層式になっているポットの中心に、管が通っているものを想像して下さい。下には水を、上には香味原料が入っている状態で下から加熱すると、蒸気圧によって水面が押されて中心にある管を通ってお湯が上まで噴き上げます。そのお湯が香味原料にかかって、成分が抽出される仕組みになっています。
香味原料を直接加熱しないことによって、熱を加えると変質してしまう果物からの抽出も可能にし、循環させることによって浸漬法よりも多く成分抽出することが可能な方法です。
リキュールの楽しみ方
カクテルで楽しむのが一般的だと思われているリキュールですが、実はその他にも様々な楽しみ方が可能なお酒なんです!
ストレート
リキュールはそのまま飲むよりも、何かで割って飲むというイメージが強いです。しかし、リキュールが持つ香りを楽しみながら、ストレートで楽しむのも楽しみ方の1つ。
私がストレートで飲むリキュールとしておすすめしたいのは、「アマレット」。杏の種子を用いて作られるリキュールで、杏仁豆腐のような香織を楽しむことができます。イタリアンなどを食べた後の食後酒として、デザート感覚で楽しむのもいいですよ!
アマレットは、ミルクで割ったり、ジンジャーで割ったりと幅広い楽しみ方ができるリキュールなので、お酒好きの方はぜひご自宅に1本持っておくと便利かもしれませんね!
ストレートで飲む時には、ショットグラスを使って少しずつ飲むのが一般的な楽しみ方。甘い味で誤魔化されてしまいますが、スピリッツのような度数の高い蒸留酒を使っているため、基本的にかなりアルコール度数が高いという点には注意してくださいね。
ロック
氷にリキュールを注いだ、シンプルなロックスタイルもおすすめの1つ!冷たくすることによって、すっきりと飲みやすくアルコール度数も和らぎます。徐々に氷が溶けることによって味も変化していき、色んな表情を楽しむことができますよ。
ロックスタイルでおすすめしたいのだ「ティフィン」。紅茶を原材料としており、味わい・香り共に高級感のある人気のリキュールです。ロックでちびちびと飲みながら、程よい甘さと香り高さを楽しんでみてください。
ロックの他にも、ミルクで割った「ティフィンミルク」も人気の飲み方です!
ロックは比較的どのようなリキュールでも美味しく飲むことができる飲み方ですので、いろんなリキュールを試してみてお好みを見つけるのも面白いかもしれませんね。
水割り
リキュールの水割りはあまり一般的ではありませんが、本来の香りや味を確かめる際には有効な飲み方の1つ。
特に「アブサン」は、水割りで飲むのにぴったりなリキュール!アブサンは、水で割ることによって、白濁とした液体に色が変化します。この色の変化もアブサンの楽しみの一つ。好みの具合に加水して、楽しんでみてください。
また、アブサンファウンテンという専用の器具を使って飲む飲み方も有名。パーティーなどでやると盛り上がること間違いなしです!
ソーダ割り
さっぱり飲みたいという人には、やはり「ソーダ割り」がおすすめ!ハーブ系、果物系のどちらでも美味しく飲むことができて、リキュール本来の風味と軽やかな味わいを楽しむことができます。
どのようなリキュールでも美味しく飲めますが、やはり「カシス」は長年の人気リキュール。さっぱりとしながらも甘みを感じるカシスソーダにして、炭酸ののどごしの良さを楽しんでみてください。
ソーダ割りの際は、リキュールの量で濃さを調整しながら丁度いい塩梅を見つけるのがポイントですよ!
自分好みのリキュールを見つけよう
各国の特産品を使用した個性あるものや、昔から長く愛されているもの。世界中では様々なリキュールが作られています。今回紹介したリキュールは、ほんの一部。
この記事を読んで興味を持った方は、ぜひバーなどで色々な種類のリキュールを楽しんでみてくださいね。